働き方改革やテレワークの普及も背景にあった中で、フリーランス人口はコロナ禍によって急増。2021年10月時点では約1,577万人にのぼりました。
フリーランス人口の増加に伴い、比例して増えたのが仕事のトラブル増加。政府の調査によると、約4割のフリーランスが仕事上のトラブルを経験しているようです。
このような背景を受け、フリーランスの立場を守るため2022年9月に打ち出されたのが「フリーランス保護新法」です。
フリーランス保護新法は、現在フリーランスで活躍する方によっては無視できない法律です。
本記事ではフリーランス保護新法の内容や影響などを解説します。
フリーランス保護新法とは?
フリーランス保護新法とは、企業などの発注者とフリーランスとの取引を適正化し、フリーランスが安定的に働けるようにするための法案です。
本法案は2022年秋の臨時国会に提出され、成立に向けた議論が行われる予定です。
現状の課題感
フリーランス保護新法が考案された背景には、フリーランスの立場の弱さが挙げられます。内閣官房の調査によると、フリーランスは業務内容や報酬内容が明示されなかったり、報酬の支払いが期日通りに行われなかったりといったトラブルが生じがちです。
また、報酬の一方的な減額や納期の一方的な短縮など、受注者であることから不利な状況に立たされやすいことも懸念点だといえます。
目的は企業とフリーランスの対等な関係を築くこと
フリーランスが増加しており、少なくないトラブルがあるという状況から、今回の法整備が検討されたということでしょう。
新法で企業側に課される遵守事項
① 業務委託の開始と終了について
企業はフリーランスに業務委託する際に、以下の項目を書面または電磁的記録(メールなど)で記載する必要が生じます。
- 業務内容
- 報酬額
- 契約期間
- 契約の終了事由
- 契約を中途解除した場合の費用など
また、企業はフリーランスとの継続契約を終了する場合、30日前までに予告しなければなりません。継続契約の終了にあたってフリーランスから理由を聞かれた際は説明も必要です。
② 業務委託の募集について
企業は、フリーランス案件を募集する際、正確かつ最新の募集内容を掲載し、虚偽表示や誤解を招く表示をしてはいけません。
もし事情が変わって募集内容と実際の業務委託内容に差異が生じる場合は、変更内容の説明も合わせて求められます。
③ 報酬の支払いについて
企業はフリーランスに対して、成果物を受領してから60日以内に報酬を支払う必要が生じます。
フリーランス保護新法によって61日以上の支払い遅延は許されなくなります。
④ 発注側の禁止行為について
企業はフリーランスとの継続契約において、フリーランス側に責任や落ち度がない限り以下の行為が禁止されます。
また、以下の行為によってフリーランスの利益を阻害することも禁止事項です。
- 企業側の都合で金銭やその他経済上の利益を提供させること
- 給付内容の変更や見直しを強制すること
⑤ 発注側が取り組む就業環境の整備について
企業は、フリーランスに対する就業環境の整備も求められます。具体的には以下2点です。
- ハラスメント対策
- 出産・育児・介護との両立への配慮
ハラスメント対策では、ハラスメント行為に対する適切な体制整備や措置が必要です。
出産・育児・介護との両立への配慮では、フリーランスからの申し出に応じて、就業条件などの配慮が求められます。
すなわち、企業はこれまで従業員に対して行っていた就業環境の整備を、雇用関係のないフリーランスに対しても行う必要が生じるのです。
もし発注者である企業側が上記①~⑤の遵守事項に違反した場合、企業は指導や勧告、公表、命令などの履行確保措置を取られることになります。
したがって、フリーランス保護新法の成立後は法的措置が発動するため、企業は遵守事項に従わざるを得ないでしょう。
【参考】内閣官房の「フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性」
今後、フリーランスとしては働きやすくなる?
結論から、今回の新法はフリーランスにとってポジティブなものです。
これまで起きていたトラブルに対するダイレクトなソリューションですので、今後さらに働きやすい方向になっていくでしょう。
フリーランスが抱える主なトラブルは以下の事柄です。
- 案件を受注する際に、業務内容あいまいであること
- 報酬が決められた期日までに支払われないこと
- 発注側から一方的に減額や納期変更がされること
さらに、発注者が遵守事項に違反した場合、フリーランスは国の行政機関に申告が可能です。申告したことによる不当な業務委託解除やその他不利益な待遇も国が禁止されていますが、その後の契約に影響も懸念されます。
法整備後の動向も注視すべきといえるでしょう。
フリーランス保護新法はフリーランスにとってメリットが多い
働き方改革などを背景に人気の高まるフリーランスですが、弱い立場になりやすいことが課題です。4割近いのフリーランスが「不明瞭な業務指示」「報酬の支払い遅延」「一方的な報酬減額や納期変更」などのトラブルを経験しています。
フリーランス保護新法は2022年11月現在では成立前で、まだ法案の状態です。2022年秋の臨時国会(予定)にてフリーランス保護新法は成立する可能性が高いといえます。
【フリーランス保護新法の概要】
- 業務内容や報酬額、契約期間などの書面または電磁的記録(メールなど)での明記
- 契約終了する際のフリーランスへの事前告知(30日以上前)
- 正確かつ最新情報での募集内容の掲載
- 成果物受領後、60日以内の報酬支払い
- 正当な理由なく一方的に成果物の受領拒否や報酬の減額をしないこと
- ハラスメント対策や出産・育児・介護との両立への配慮を行うこと
フリーランスとして働いている方はは関連する法律にも注目していきましょう。
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元フリーランスエンジニアがリモートワークやキャリアに関する情報をお届け。
株式会社TERAZ 代表としてフルリモート案件専門のエージェントサービス「Remoters」やリモートワークメディア「Remocari」を運営しています。
上流SE/PHP/Ruby on Rails/React/Typescript/などの開発経験を経てRemotersに。