システム開発に従事するSE(システムエンジニア)は、さまざまな業界や業種と接しています。金融業界もそのうちの1つです。
金融業界では、膨大な量のデータを扱い、高度なセキュリティが必要とされるシステムが求められます。そして金融系SEは、金融システムの安定的な運用を支える重要な存在です。
本記事では、金融系SEの仕事内容や求められるスキルについて、金融系SE経験者の立場から解説します。
金融系SEとは?
金融系SEとは、システム開発に従事するSEのなかで、金融系システムを担当するSEです。
システムはあらゆる業界や業種で用いられているため、SEの活躍分野は以下に挙げるように多岐にわたります。
- 官公庁
- 地方自治体
- 介護
- 金融
- 製造業
- 小売業
- 公営サービス など
金融系システムは大規模であり、多くのSEが日々活躍している業界です。
金融系SEの主な仕事内容
ここでは、金融系SEの仕事内容について、以下の観点で解説します。
- システム開発のプロジェクト管理
- システムのテスト
- システムトラブルの解決
- 顧客とのコミュニケーション
システム開発のプロジェクト管理
まずはプロジェクト管理です。一般的に、システム開発のプロジェクト管理としては、以下に挙げるような項目を管理していきます。
- 品質管理
- 進捗管理
- コスト管理
- スコープ管理
- リスク管理
上記のなかで、金融系システムにとって特に重要なのが「品質管理」と「リスク管理」です。
金融系システムは、企業や個人の資金決済や送金を支える重要なインフラです。システムトラブル時の社会への影響が甚大であるため、常に安定稼働が求められるミッションクリティカルなシステムだといえるでしょう。
そのため、システムを安定稼働させ続けるための品質管理と、システムトラブルにつながる要因を排除するリスク管理が重要です。
システムのテスト
システムのテストでは、さまざまなバリエーションでテストを行います。たとえば、以下の条件でテストパターンを組むことが考えられます。
- 試験日付(当日日付・過去日付・先日付など)
- 電文種別(小口振込・大口振込・送金・給与など)
- マシン環境(メイン系・バックアップ系など)
また、デグレード確認として、直接的に機能改修を実施していない付随箇所の無影響確認を行うことも一般的です。
このように、金融系システムでは万が一のシステムトラブルを最小限に防ぐため、多くのテストパターンや環境を使ってテストを実施します。大規模なプロジェクトでは、テストだけで1年以上のスケジュールを組むこともめずらしくありません。
システムトラブルの解決
金融系システムで万が一トラブルが発生した際は、曜日や時間帯に関わらず、緊急対応が必要です。
金融系のシステムトラブルは多くの場合、シフト体制でシステム監視を行っているオペレーターが検知します。機能や処理の異常終了メッセージによってシステムトラブルを検知し、運用責任者をはじめとする関係者に緊急連絡が行われます。
ベンダー側へは、まずは部長や課長などの責任者に緊急連絡が入ることが一般的です。その後、緊急対策会議室が設けられ、関係メンバーが招集されます。
緊急対策会議室では、設計書や仕様書を基に、システムトラブルの原因調査や暫定対処の策定を実施します。調査状況や対処状況は、ユーザー側SEとベンダー側SEの間でこまめに情報共有されることが多いです。
顧客とのコミュニケーション
システムトラブル対応時以外でも、顧客と日常的にコミュニケーションを取る機会があります。たとえば、システムに対する問い合わせ対応や顧客からの影響調査依頼に対応することがよくあります。
影響調査依頼の例としては、元号変更に伴う影響調査などが実際にありました。元号が「平成」から「令和」に変更されることに伴い、現行システムで改修となる機能数や概算工数の見積もりを実施します。
そして、調査結果を基に顧客と話し合いを重ね、案件立ち上げに向けて準備をしていくイメージです。
金融系SEに求められるスキル・知識
金融系SEに求められるスキル・知識としては、以下が挙げられます。
- しっかりと確認をしながら仕事を進めるスキル
- 金融業界の知識
- 情報セキュリティに対する高いリテラシー
しっかりと確認をしながら仕事を進めるスキル
金融系SEは、SEのなかでも特に品質を重視して働くことが求められます。少しの設計ミスや開発ミスが重大な決済トラブルなどにつながり、新聞やニュースに載ることもあるためです。
たとえば、既存の設計書を修正する場合でも、先輩によるレビューと上司によるレビューの2工程は必ずありました。句読点や記号の単純ミス1つでも、しっかりと赤字で指摘されます。
金融系SEとして活躍するためには、こまかい部分もしっかりと自分で確認し、ドキュメントやプログラムのミスを最小化することが不可欠です。
金融業界の知識
金融系SEとして働くうえでは、金融業界の知識も必要です。
たとえば、決済系のシステムに従事する場合、資金決済に関する知識は欠かせないでしょう。ほとんどの決済系システムは、全銀システム(全国銀行データ通信システム)に接続されているため、全銀システムの仕様理解が重要です。
金融業界の知識を習得することで、設計や開発をよりスムーズに行えるようになります。
情報セキュリティに対する高いリテラシー
金融系SEは、情報セキュリティに対する高いリテラシーも必要です。情報セキュリティはどの分野でも重要ですが、金融系システムは企業や個人の大切な資金を扱うシステムであるため、とりわけ重要です。
たとえば、データセンターに入室する際は、スマートフォンやパソコン、USBなどの電子機器は原則持ち込み禁止となっています。また、データセンターへの入退室権限は基本的に与えられず、入退室の際は常住している運用担当に同行してもらうことになります。
さらに、本番環境を操作した際は、操作開始時刻や操作終了時刻、操作ログなどを一式まとめて顧客に報告する必要があります。
このように堅牢な情報セキュリティ環境で働くことになるため、高いセキュリティ意識を持つことが求められます。
金融系SEとして働く魅力
本章では、金融系SEとして働く魅力を解説します。主な魅力は以下のとおりです。
- 大規模なプロジェクトに携われる
- 高収入を得やすい
- 社内で昇進しやすい
大規模なプロジェクトに携われる
金融系システムは大規模であることが多いため、金融系SEは大規模なプロジェクトに携われます。
たとえば、メインフレームでは約8年に一度、オープン系では約5年に一度あるシステム更改では、100億円以上のプロジェクトとなることもめずらしくありません。
このような規模感のプロジェクトは、他の業界ではなかなか経験できないでしょう。
高収入を得やすい
収入については所属企業やプロジェクトによって異なるため一概には断定できませんが、経験上、金融系SEは高収入を得やすいです。
主な理由は、金融業界は潤沢な資金を持つ顧客が多く、プロジェクトに十分な予算が投下されやすいためです。
実際に金融系SEとして働いていた際も、他業界のプロジェクトを担当する同期よりも年収が多少高かったのを覚えています。
プロジェクト予算が十分にあるため、残業代もしっかりと支給され、社内でのボーナス部門評価も高くなっていました。
社内で昇進しやすい
前述の収入面にも通ずるところがありますが、金融系SEは社内での昇進が早い傾向にありました。
もちろん個人差はありますが、周囲の先輩や同僚を見ると、最速で昇進しているのは金融系SEが多かったです。
やはりプロジェクト予算が十分にあることから、担当部門の利益率が高くなり、社内での評価が高かったのだと思います。
金融系SEとして働く際の注意点
前述のような魅力がある一方、金融系SEとして働く際は注意点も存在します。主な注意点は以下のとおりです。
- 夜勤や突発対応がある
- 新しい技術やトレンドに携われない可能性がある
夜勤や突発対応がある
金融系SEで働く場合、夜勤や突発対応は生じる前提で考えたほうが良いでしょう。
金融系システムは常に稼働しており、メンテナンスを行う場合は土日祝の夜間帯が基本です。そのため、システムリリースなどを行う際は、土日祝の夜勤対応となることが多いです。
また、システムトラブル時は、曜日や時間帯に関係なく呼び出される可能性があります。
ミッションクリティカルなシステムを担当しているため、システムを守るために生活リズムが多少崩れる可能性がある点は認識しておいたほうがよいでしょう。
新しい技術やトレンドに携われない可能性がある
金融系システムは安定稼働が第一であるため、新しい技術やトレンドを取り入れにくい側面があります。
もちろん例外もありますが、依然としてメインフレームで運用している銀行系システムも少なくないでしょう。システムトラブル防止を最優先する結果、新しい技術やトレンドを導入することよりも、現行システムの延命を選択しがちです。
最新技術やトレンドを取り入れながら働きたいSEにとっては、金融系SEはマッチしない可能性があります。
【まとめ】金融系SEはシステムの安定稼働が第一ミッション
金融系SEは、金融系システムの安定的な運用を支える重要な存在です。金融系システムは安定稼働が第一であるため、プロジェクト管理のなかでも特に品質管理やリスク管理が重要となるでしょう。
金融系SEとして活躍するためには、ドキュメント・プログラムをしっかりと確認しながら丁寧に仕事を進めるスキルや金融業界の知識、高い情報セキュリティ意識が欠かせません。
金融系システムは大規模であることが多いため、大規模なプロジェクトに携わりたい方にはおすすめできます。
一方で、夜勤や突発対応がある点、新しい技術やトレンドに携われない可能性がある点などは認識しておいたほうがよいでしょう。
Remotersは、テレワーク/リモートワークの働き方を支援するエージェントサービスです。Remotersでは、フリーランス・正社員向けの「フルリモート案件のみ」をご紹介しています。自由な働き方を求める方やフリーランスITエンジニアとしてスキルアップしていきたい方は、是非ご相談ください。
元フリーランスエンジニアがリモートワークやキャリアに関する情報をお届け。
株式会社TERAZ 代表としてフルリモート案件専門のエージェントサービス「Remoters」やリモートワークメディア「Remocari」を運営しています。
上流SE/PHP/Ruby on Rails/React/Typescript/などの開発経験を経てRemotersに。