SES
SESと受託開発の違いやメリデメは?発注前に気を付けるポイントも合わせて解説
2023.10.20
システム開発の発注を検討している企業にとって、SESと受託開発どちらがいいかということは重大な問題でしょう。提示した要求仕様や予算、納期はもちろん、さまざまなニーズに応じて適切に提案し、実現してくれる発注先を選定する必要があります。
この記事では、システム発注を行う人に向けて、SESと受託開発それぞれの違いやメリット・デメリットについて詳しく解説します。発注前に気を付けるべきポイントも合わせてご紹介しますので、参考にしてください。
目次
SESと受託開発の違いについて
まず初めに、SESと受託開発の違いについて見ていきましょう。
SESとは
SESとは「System Engineering Service」の頭文字を取った言葉で、企業がITエンジニアと準委任契約を結ぶことにより、システム開発の一部を委託する契約形態です。
一般的にはクライアント企業とベンダー企業の間で契約が交わされ、ベンダー企業がITエンジニアをクライアント企業へ派遣します。派遣されたITエンジニアは契約期間内クライアント企業内で常駐し、システム開発や保守・運用といった契約内の業務に従事します。
SESにおけるITエンジニアは、システム現場に必要な人員や工数を確保するための要員であり、成果物に対する責任を負いません。そのためSESの報酬は、ITエンジニアの能力に応じた単価と実際の労働工数(労働時間)に応じて支払われます。
またSES契約において、クライアント企業はITエンジニアに対して指揮命令を行う権利を持ちません。ITエンジニアの指揮命令権はベンダー企業(フリーランスの場合は本人)にあり、業務命令を行うと「偽装請負」という法律違反になります。
SESは待遇面だけ見れば派遣社員に近いものですが、指揮命令系統や成果物の定義が異なるため注意が必要です。契約書の内容を明確にし、気づかないうちに偽装請負にならないよう気を付けましょう。
受託開発とは
受託開発とは、クライアント企業からシステム開発の依頼を請け負って開発業務を行うことです。システム開発会社やフリーランスエンジニアなどがこの役割を担っています。
受託開発の特徴は、開発者が成果物に対して責任を負っている点です。開発を行う企業や個人は、成果物を納品し、検収を経て正常に稼働するまでのすべての責任を負っています。そのため、報酬は納品・検収が完了したタイミングで支払われます。なお、ネットワークやサーバーといったインフラ関係の構築などが業務に含まれる場合もあります。
システム開発においては、納品後やシステム稼働後に不具合が見つかるということもよくあります。この場合、受託開発企業の責任として定められている「契約不適合責任」の範囲内で対応が行われるのが一般的です。
それぞれの違い
SESと受託開発、それぞれの違いを表にまとめたものが以下になります。大きな違いは、契約に対する義務と報酬を算出する対象、指揮命令権の有無です。
項目 | SES | 請負契約 |
---|---|---|
契約形態 | 準委任契約(履行割合型) | 請負契約 |
契約義務 | 業務に従事すること | 成果物を納品すること |
報酬が発生する対象 | 労働時間 | 成果物 |
契約不適合責任 (不具合が発生した場合などの対応責任) | なし | あり |
クライアント企業の指揮命令権 | なし | あり |
SESのメリット
SESでITエンジニアと契約を結ぶメリットにはどのようなものがあるかを見ていきましょう。
ITエンジニアの採用・育成コストがかからない
SESのメリットは、採用・育成コストがかからないことです。
システム開発のためのITエンジニアを自社で採用、育成するためには、かなりのリソースと費用、時間がかかります。とくに採用は人材募集から面接、選考、内定、さらに内定後のフォローに至るプロセスで多大なコストがかかり、内定後の辞退や採用後の退職があれば大きな損失を招くリスクがあります。
一方SESであれば、一定の技術やスキルを有したITエンジニアを簡単に確保できるうえ、諸費用のコスト削減にもつながります。
このため、「自社内ではITエンジニアのリソース確保が難しい」「即戦力になるITエンジニアを今すぐ確保したい」というケースで、SES契約のITエンジニアが多く活躍しています。
必要なスキルを持ったITエンジニアを確保できる
システムやプロジェクトによって、ITエンジニアに求められるスキルは異なります。またITエンジニアによっても保有するスキルはさまざまであり、多様なスキルを持ったITエンジニアを自社採用で確保するのは大変です。
SESであれば、プロジェクトごとに必要なスキルを持ったITエンジニアを配置すればいいので、このような問題を解決できます。インフラエンジニアやフロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニアなど、ITエンジニアを必要な場所へ配置できれば、業務を効率化できるでしょう。
必要に応じて稼働をコントロールできる
SESのメリットとして、必要に応じてプロジェクトごとに稼働をコントロールできるということが挙げられます。
自社採用でITエンジニアを雇用する場合、プロジェクトに空きが出ないようITエンジニアの稼働を常に確認し、調整しなければなりません。ITエンジニア一人一人の状況を管理するのは、なかなか手のかかる作業です。
しかしSESであれば、「一定の期間内だけピンポイントでITエンジニアが欲しい」といった際にも簡単に人材を確保できます。業務内容はプロジェクトや契約期間に限定されるため、稼働のコントロールがしやすくなります。
受託開発のメリット
次に、受託開発のメリットについても見ていきましょう。
用途に応じたシステムを構築しやすい
受託開発は成果物そのものに責任が生じるため、用途に応じたシステムを構築しやすいのがメリットです。
システムに必要な要件と予算計画、納期などを整理できれば、実現方法の提案から環境構築、開発、リリースなどの工程を任せられるという安心感があります。細かい要望なども要件に盛り込んでおくことで、本来のニーズに近いシステム構築が可能になります。
自社のIT人材は最小限で済むことが多い
受託開発の場合、自社のIT人材を最小限で済ませられることが多いのもメリットです。
開発の実務を担うITエンジニアを自社内で確保するのはコストと労力が必要ですが、受託開発ならシステム開発企業に開発を委ねられるため、工数やコスト、リソースを削減できます。
システムの改修や保守も任せられる
請負契約の内容にもよりますが、受託開発の場合、システムの改修や保守といったリリース後の作業も任せられるのはメリットと言えるでしょう。
一度リリースされたシステムの一部を見直して改修したり、リリース後の継続的な保守作業にはリソースの確保が必要であり、さらにコストや労力もかかります。受託開発の契約内にそれらを盛り込んでおけば、開発後にも外部へシステムを任せられるようになります。
SESのデメリット
SESのメリットに対して、デメリットも見ていきましょう。
セキュリティに気を付ける必要がある
SESのITエンジニアには、セキュリティ面で配慮が必要です。
自社の従業員であれば、セキュリティ教育などによってセキュリティ意識の向上をはかることができます。しかしSES契約のITエンジニアとは直接的な雇用関係がないため、自社の情報や従業員、リソースを守るための対応が必要になるのです。
たとえば、オフィス入室の際にはセキュリティカードなどを義務付ける、SES用の勤怠管理システムを導入する、機密情報に対する守秘義務を遵守するよう秘密保持契約を結ぶ、Pマーク(※1)やISMS(※2)などの個人情報保護に関する認証を取得している企業を選択するといった方法があります。
(※1)プライバシーマーク制度
(※2)情報セキュリティマネジメントシステム
クライアント企業は直接業務指示が出せない
SESは準委任契約のため、クライアント企業が直接業務指示を出せないのはデメリットと言えるでしょう。
すでにお伝えしているとおり、SES契約ではクライアント企業に指揮命令権はありません。仮にSESのITエンジニアに対して業務命令を行った場合は「偽装請負」という法律違反になり、「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」(職業安定法64条9号)が科される場合があります。
受託開発のデメリット
最後に、受託開発のデメリットについても見ておきましょう。
開発費用が高額になることが多い
コスト削減のために受託開発を選択したのに、度重なる仕様変更や見直しの結果、最終的に開発費用が高額になってしまうことはよくあります。
システムのすべてを外部へ丸投げにするのではなく、必要な内容のみを受託開発として依頼するなど、開発費用の膨張を防ぐための工夫が必要です。
自社エンジニアの育成機会の損失
受託開発の場合、自社のITエンジニアを育成する機会を失う点はデメリットと言えるでしょう。外部のITエンジニアに開発を依頼するため、開発ノウハウや業務経験、スキルを獲得する機会が失われ、自社のITエンジニアが育ちにくくなります。
自社のITエンジニア育成を考えるなら、受託開発と並行して自社開発も行うなど、自社エンジニアの育成機会を創出することが大切です。
開発途中で要件変更がしづらい
システムの大部分を受託開発に任せていると、開発途中で要件や仕様が変わった際に対応しにくいのもデメリットです。
自社開発ならすぐに対応できるような小さな変更であっても、受託開発ではWBSの引き直し、工数や費用の算出、ITエンジニアの配置変更などが必要になり、想定外の大掛かりなものになってしまう場合があります。
【まとめ】
システム開発を発注する際は、予算や納期、要件などを明確にしたうえで、SESと受託開発どちらが適しているかを検討することが大切です。Remotersでは、全国各地の優秀なSESエンジニアをニーズに応じて派遣できます。これからSESを利用しようと考えている企業の方は、お気軽にお問い合わせください。